万葉集番の作者・分類|訓読・読み|意味・訳|原文

万葉集番の作者・分類、訓読・読み、意味・訳、原文についてまとめます。

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万葉集番について

歌番号

無記1番

原文

竊以|朝夕佃食山野者|猶無灾害而得度世|[謂常執弓箭不避六齋|所値禽獣不論大小孕及不孕並皆g食|以此為業者也]|晝夜釣漁河海者|尚有慶福而全經俗|[謂漁夫潜女各有所勤|男者手把竹竿能釣波浪之上|女者腰帶鑿篭潜採深潭之底者也]|况乎我従胎生迄于今日|自有修善之志|曽無作悪之心|[謂聞諸悪莫作諸善奉行之教也]|所以礼拜三寶|無日不勤[毎日誦經發露懺悔也]|敬重百神|鮮夜有闕|[謂敬拜天地諸神等也]嗟乎媿哉|我犯何罪遭此重疾|[謂未知過去所造之罪|若是現前所犯之過無犯罪過何獲此病乎]

訓読

竊(ひそか)に以(おもひみ)るに、朝夕山野に佃食(てんしょく)する者、猶ほあ害(さいがい)無く、世を度(わた)ることを得。[常に弓箭を執りて、六齋を避けず、値(あ)ふ所の禽獣、大小孕(はら)めると孕まざるを論ぜず、並に皆g(ころ)して食らひ、此を以て業(なりはひ)と為す者を謂ふ也]。晝夜河海に釣漁する者、尚慶福有りて、經俗を全(まっとう)す。[漁夫潜女各(おのおの)勤むる所あり、男は手に竹竿を把り、能く波浪の上に釣る。女は腰に鑿と篭を帶び、潜(かづ)きて深潭(しんたん)の底を採る者を謂ふ也]|况んや我胎生より今日迄(まで)自ら修善の志あり。曽て作悪の心無し。[諸悪莫作、諸善奉行の教を聞くを謂ふ也]。所以に三寶を礼拜し、日として勤めざること無く、[毎日誦經し、發露懺悔する也]|百神を敬重し、夜として闕くること有る鮮(な)し。[天地諸神等を敬拜するを謂ふ也]|嗟乎(ああ)い(はづかし)きかな。我何の罪を犯してか此の重疾に遭へる。[未だ過去に造る所の罪か、若しくは是れ現前に犯す所の過(あやまち)なるかを知らず、罪過を犯す無くして何ぞ此の病を獲む乎を謂ふ]|初めて痾(やまひ)に沈みしより已来(このかた)、年月稍(やくやく)多し。[十餘年を經たることを謂ふ也]。是の時、<年>七十有四、鬢髪斑白にして、筋力う贏(おうら)なり。但に年老ひたるのみにあらず、復た斯の病を加へたり。諺に曰く、痛き瘡(きず)は塩を潅(そそ)ぎ、短材は端を截(き)るといふは、此の<謂>(いひ)也。四支動かず、百節皆疼(いた)み、身體太(はなはだ)重きこと、猶ほ鈞石を負ふがごとし。[廿四銖を一兩と為す。十六兩を一斤(こん)と為す。卅斤を一鈞と為す。四鈞を<一>石と為す。合はせて一百廿斤也]。布を懸けて立たむと欲(おも)へば、翼折れたる鳥の如し。杖に倚(よ)りて歩まむとするに、足跛(な)へたる驢(うさぎうま)のごとし。吾、身已に俗を穿(うが)ち、心も亦塵に累(つなが)るるを以て、禍(わざわひ)の伏する所、<祟>の隠るる所を知らむと欲し、龜卜の門、巫祝の室、徃きて問はざる無し。若(も)しくは實、若しくは妄、其の教へる所に随ひ、<幣>帛を奉り、祈祷せざるは無し。然りて弥(いよよ)増苦あり。曽て減差なし。吾聞く、前代多く良醫有り。蒼生の病患を救療しき。楡<柎>、扁鵲、華他、秦の和、緩、葛稚川、陶隠居、張仲景等の若(ごと)きに至りては、皆是れ世に在りし良醫、除き愈(なお)さずといふこと無し。[扁鵲、姓は秦。字は越人。勃海郡の人なり。胸を割(さ)き、心を採り、易へて置き、投ずるに神藥を以てすれば、即ち寤めて平なるが如し。華他、字は元化。沛國、え(しょう)の人なり。若(もし)病の結積、沈重、内に在る者有らむに、腸を刳(さ)き病を取り、縫ひて復た膏を摩(す)る。四五日にして差(い)ゆ。]|件の醫(くすし)を追ひ望むとも、敢へて及(し)く所に非(あら)ず。若し聖醫神藥に逢はば、仰ぎ願はくは、五蔵を割(さ)き刳(えぐ)り、百病を抄探し、膏肓のお處(おうしょ)に尋ね逹(いた)り、[盲は鬲(かく)なり。心の下を膏と為す。之を攻(う)てども、可(よ)からず。之に逹するも及ばず。藥も至らず]|二竪の逃れ匿(かく)るるを顯(あら)はさまく欲りす。[晉の景公疾(や)む。秦の醫(くすし)緩、視て還りしを謂ふ。鬼の為にg(ころ)さゆと謂ふべし]|命根既に盡き、其の天年を終る。尚哀しと為す。[聖人賢者一切の含霊、誰か此の道を免(のが)れむや]|何ぞ况んや生録未だ半ばならず、鬼の枉g(おうさつ)と為り、顏色壮年にして病の横困と為らむをや。世に在る大患、孰(いづれ)か此より甚しからむ|[志恠記に云く、廣平の前の大守、北海徐玄方の女、年十八歳にして死す。其の霊馮馬子に謂ひて曰く、我が生録を案(かんが)ふるに當に壽(よはひ)八十餘歳なるべし。今妖鬼の為に枉g(おうさつ)せられ、已に四年を經たり。此に馮馬子に遇ひて、乃ち更に活くるを得たること是なり。内教に云ふ。瞻浮州の人、壽百二十歳と。謹みて此の數を案ふるに必らずしも此を過ぐるを得ざるに非ず。故に壽延經に云く、比丘有り。名を難逹と曰ふ。命終る時に臨みて、佛に詣でて壽を請ひ、則ち十八年を延べたり。但し善なる者、天地と相ひ畢(おは)る。其の壽夭は、業報招く所にして、其の脩短に随ひ、半(なかば)と為る。未だ斯のt(さん)に盈(み)たずしてか(すみやか)に死去す。故に未だ半ならずと曰ふ。任徴君曰く、病は口より入る。故に君子は其の飲食を節す。斯(これ)に由りて言はば、人の疾病(やまひ)に遇ふは、必らずしも妖鬼にあらず。夫れ醫方諸家の廣説、飲食禁忌の厚訓、知ること易く、行ふこと難きの鈍情、三つは目に盈ち、耳に滿つこと由来久し。抱朴子に曰く、人は但(ただ)其の當に死なむ日を知らず。故に憂へず。若し誠に羽き(うかく)して期を延ぶることを得べしと知らば、必らず之を為さむ。此を以て觀れば、乃ち知る。我が病は、盖し斯れ飲食の招く所にして自ら治むること能はざる乎と]|帛公略説に曰く、伏して思ひ自ら勵むに斯の長生を以てす。々(せい)は貪(ぬさぼ)る可し。死は畏(い)む可し。天地の大徳を生と曰ふ。故に死人は生ける鼠に及(し)かず。王侯と為ると雖も、一日(ひとひ)氣(いき)を絶たば、積める金(くがね)山の如くありとも、誰が富(ゆたけし)と為さむ。威勢(いきほひ)海の如くありとも、誰が貴しと為(せ)む。遊仙窟に曰く、九泉下の人は、一錢だに直せずと。孔子曰く、之を天に受けて變(うつ)し易ふ可からぬ者は形なり。之を命に受けて請ひ益(くは)ふ可からぬ者は、壽(いのち)なり。[鬼谷先生の相人書に見ゆ]|故に生の極めて貴く、命の至りて重きことを知る。言はむと欲(おも)へば、々(こと)窮る。何を以てか言はむ。慮(おもひはか)らむと欲(おも)へば、々(おもひはかり)絶ゆ。何に由(より)てか慮(おもひはから)む。惟以(おもひみれば)人賢愚と無く、世古今と無く、咸悉(ことごとに)嗟歎(なげ)く。歳月競ひ流れて、晝夜息(いこ)はず。[曽子曰ふ、徃きて反(かえ)らぬ者は、年なり。宣尼川に臨む。歎も亦た是矣(ぞ)]|老疾相催(うなが)して朝夕に侵し動(さわ)く。一代の懽樂、未だ席前に盡きずして、[魏文時賢を惜しむ詩に曰く、未だ西苑の夜を盡くさず。劇(たちまち)に北<く>(ほくぼう)の塵と作る]|千年の愁苦更に坐後に継ぐ。[古詩に云く、人生百に滿たず。何ぞ千年の憂(うれひ)を懐(いだ)かむ]|夫れ群生品類(ぐんじょうほんるい)の若(ごと)きは、皆盡ること有る身を以て並びに窮無き命を求めずといふこと莫し。所以に道人方士の自ら丹經を負ひ、名山に入りて藥を合はする者は、性を養ひ神を怡(よろこ)びしめて以て長生を求む。抱朴子に曰く、神農云はく、百病愈(い)へずは安(いか)にぞ長生を得むと。帛公又曰く、生は好き物なり。死は悪しき物なり。若し不幸にして長生を得ずは、猶ほ生涯病患無き者を以て福(さきはひ)大(おほ)しと為さむ。今吾病の為に悩まさ見(れ)て臥坐(ふしゐ)すること得ず。東に向かひ、西に向かひ、為す所知ること莫し。福(さきはひ)無きことの至りて甚しき、惣(すべて)我に集まる。人願へば天従ふといへり。如し實(まこと)有らば、仰ぎ願はくは、頓(たちまち)に此の病を除き、頼(さきはひ)に平らかの如きを得むと。鼠を以て喩と為す。豈に愧(は)じざらむや|[已に上に見ゆ]

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かな読み

なし

カタカナ読み

ナシ

ローマ字読み|大文字

NASHI

ローマ字読み|小文字

nashi

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左注|左註

特に無し

事項|分類・ジャンル

沈痾自哀文|仏教|老|病気|嘆翮

校異

->年【西(右書)】【紀】【細】【温】|->謂也【西(右書)】【紀】【細】【温】|->一【西(右書)】【細】【温】|崇->祟【定本】|弊->幣【代匠記初稿本】|樹->柎【細】【温】【矢】|他->化【紀】【細】|->若有病結積【西(左書)】【温】【矢】【京】|重者->重【紀】【細】|採->探【紀】【細】【温】|->既【西(右書)】【紀】【細】【温】|下->年【西(右書)】【紀】【温】【細】|狂->枉【細】|微->徴【細】|羽【紀】【細】則|乎也->乎【細】|->壽【西(右書)】【紀】【細】【温】|久->夕【西(右書)】【紀】【細】【温】|権->懽【温】【矢】【京】|望->邙【代匠記初稿本】|藥之【細】【紀】(塙)藥

寛永版本

巻数

第なし巻

作者

山上憶良